事務所の衛生基準をご存知ですか?明るさは?トイレは?
令和3 年12 月1 日に「事務所衛生基準規則及び労働安全衛生規則の一部を改正する省令(令和3年厚生労働省令第188 号)」が公布され、すでに施行されています。併せて、事務所衛生基準規則(昭和47 年労働省令第43 号)及び労働安全衛生規則(昭和47 年労働省令第32 号)についても、一部運用が見直されました。
法改正施行から半年くらい経過していますが、従業員がより働きやすいように事務所における照度の基準や便所の設置基準等が見直されており、事務所等の職場環境の基準について確認しておくことは働く側にとっても大切なことだと思いますので、下記にて主な項目とポイントについて確認します。
1. 照度の基準
改正前は、事務所の作業区分が3区分ありましたが、2区分になりました。具体的には、精密な作業・300ルクス以上、普通の作業・150ルクス以上、粗な作業・70ルクス以上という基準がありましたが、改正後は、一般的な事務作業・300ルクス以上、付随的な事務作業・150ルクス以上となりました。
※付随的な事務作業とは、資料の袋詰め等、事務作業のうち、文字を読み込んだり資料を細かく識別したりする必要のないものが該当します。
事務所における高年齢労働者が増加しており、必要に応じて個々の労働者に視力を眼鏡などで矯正することを促した上で、作業面における照度を適切に確保することが重要となります。
ちなみに、300ルクスは、JISの照明基準で執務空間の受付と記載がありますので事務作業するにはやや暗いと思います。ただし、明るすぎると目が疲れやすくなりますので適度に明るすぎないようにする必要があると思います。
2. 便所の基準
便所については「独立個室型の便所」を設置することが義務化されました。設置基準は以下の通りです。
・男性用と女性用に区別せず、単独でプライバシーが確保されていること
・便所の全方向が壁等※で囲まれ、扉を内側から施錠できる構造であること
※視覚的、聴覚的観点から便所内部が便所外部から容易に知覚されない堅牢な壁や扉のこと
・1 個の便房により構成されていること
※仕切り板又は上部もしくは下部に間隙のある壁等によって構成されているものは不可
住居使用を前提として建築された集合住宅の一室を作業場として使用している場合など、便所が1 箇所しか設けられておらず、建物の構造などの理由から男性用便房、男性用小便所、女性用便房の全てを設けることが困難な場合もあります。このような場合については、同時に就業する労働者が常時10 人以内の場合には、便所を男性用と女性用に区別することの例外として、独立個室型の便所を設けることによって足りることになりました。
職場の便所については、誰もがプライバシーの確保、十分な広さ、清潔性等を望んでおり、できるだけ使いやすい便所を望んでいると思いますので、基準が高まることは有難いです。
3. 休養室・休養所の設置
常時50 人以上又は常時女性30 人以上の労働者を使用する事業者は、休養室又は休養所を男性用と女性用に区別して設ける必要があります。これらは事業場において病弱者、生理日の女性等が一時的に使用するために設けられるもので、長時間の休養等を目的としたものではないため、随時利用できる機能が確保されていれば専用の設備である必要はありません。また、休養室又は休養所では体調不良の労働者が横になって休むことが想定されており、利用者のプライバシーと安全が確保されるよう、設置場所の状況等に応じた以下のような配慮が求められます。
・入口や通路から直視されないように目隠しを設ける
・関係者以外の出入りを制限する
・緊急時に安全に対応できる
4. 温度について
事務所において、事業者が空気調和設備を設置している場合の、労働者が常時就業する室温の努力目標値が変わりました。
- 改正前 17度以上28度以下
- 改正後 18度以上28度以下
この他にも、更衣室・シャワー設備についてプライバシーの確保配慮などの見直しがされています。ぜひ、厚生労働省が公表しています「ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました」をご確認ください。
職場環境は、長期間働く上で非常に重要であり、従業員は皆働きやすいよう改善して欲しいと思っているはずです。労使で話し合いを行う等をして職場環境の不満がなくなるよう改善していって欲しいと思います。