第1回 あなたは何歳まで働きますか?

今年の4月から改正高年齢者雇用安定法が施行され、70歳までの就業機会の確保が企業の努力義務となりました。既に65歳までの雇用確保が義務化されているのはご存じのとおりですが、さらに5年間、雇用確保の延長などを行うように国は企業に求めているのです。
とは言え、この「努力義務」という言葉がくせ者で、罰則などの強制力を伴うものではないため「努力義務だから別に守らなくてもいいのでしょ?」という受け止め方をされる場合も多いのが現実です。ですから今回の法改正の実効性については少し疑問符が付きます。

このブログでは、今回の法改正の意味を考えたうえで、企業としてはどんな取り組みをしていくべきなのか、その際にポイントとなることは何かといったことなどにつき私見を交えて書いてみたいと思います。
さらには、将来もし仮に画一的な雇用延長制度が義務化されたとしてもそこで働くのはあくまでも一人の人間ですから、今まで以上に働くことの意味について一人ひとりが考えてみることが問われているように感じます。そんな視点からも働く期間が長くなることの意味を考えてみたいと思います。

法律が新たに制定されたり改正されたりするのには必ず目的があります。ある制度をつくったり改正したりすることによって、国は社会をどのように変えていこうとしているのか、ということです。法律への対応を迫られる企業の側としても、具体的な対策を考える際にはその制度趣旨をよく理解しておくことが必要だと思います。

今回施行された高年齢者雇用安定法の改正の目的について考えてみましょう。

これからの日本は少子高齢化により働く人の数が減少していくことが見込まれ、いままでは労働市場の外にいた人(働けなかった人、働かなかった人)たちにも働いてもらわなければ今までのような経済力を維持できないといわれています。これまでも一連の「働き方改革」によって長時間労働に制限をかけたり非正規労働者の処遇改善をはかったり、さまざまなスタイルでの働き方ができるようにして働き手を増やす政策が実行されてきています。今回の改正法は、高齢者の範囲をさらに広げて働く人を増やすように企業に促すこと、これが大きな目的になっています。

法律の改正といえばもう一つ、見逃せない動きがあります。このブログを読んでくださっている方の多くは民間企業にお勤めか経営者の方ですからもしかしたらあまり関心は高くないかもしれませんが、国家公務員法が改正されて国家公務員の定年が60歳から65歳へ延長されることが決まりそうです(2023年度から2年ごとに段階的に1歳ずつ引き上げ、2031年度に65歳となる予定)。
定年を延長する理由は、「平均寿命の伸長や少子高齢化の進展を踏まえ、豊富な知識、技術、経験等を持つ高齢期の職員に最大限活躍してもらうため」とされています。併せて、60歳に達した人の給与は60歳前の7割の水準とすることなど、延長期間の処遇の変更についても改正法では決められています。

この国家公務員の定年延長の影響はとても大きいと思います。国の関連団体や地方公務員にも波及するでしょうし、さらには定年延長を考えてはいるが手を付けられないでいる民間企業(かなりあるようです)の背中を押すことは間違いないのではないでしょうか。
65歳定年制に変更したり定年制そのものを廃止したりという大手企業の事例がメディアでも報じられていますが、65歳を定年とする企業の割合は、全体でみるとまだ2割にも届いていないのが現状です。これからその割合がどう増えていくのか、注目したいところです。

(第1回/全5回)2021年5月24日

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