愛知 東郷町長ハラスメント問題
第三者委が会見「悪質性高い」
愛知県東郷町の井俣憲治町長が町の職員に複数のハラスメント行為を行っていた問題で、町が設置した第三者委員会が23日記者会見を行い、「役場が小さく、職員が声をあげにくかったという意味で悪質性が高い」と指摘し、外部の相談窓口の設置などを検討する必要があるという見解を示しました。
報告書では、町長が就任以来、約6年間でパワハラとセクハラのほかに、マタハラなどがあったとしています。
「育休を1年取ったら殺すぞ」「育休を1年取った職員がいたが、出世はできないな」などの発言を繰り返していたことが発覚し、町長は「男性は育休を取っても妻のためにはなっていない。育児をしていない」などと述べているようですが、第三者委員会は、典型的なマタハラ・パタハラと認定しました。
認定された主なハラスメント言動は以下の通りです。
●パワハラ
「お前らの脳みそは鳩の脳みそよりも小さい」「帽子をかぶるためだけの頭か」
「バカ」「小学生レベル」「最上級のあんぽんたん」「三流大学出身」
「死ね」「川に流れていってしまえ。下流で見つかればいい」
「飛ばすぞ」「辞めたら?」「早く降格してくれ」
「草刈りぐらいならできるだろう」
机の側面を蹴る、計算機を机に投げつけて壊す
●セクハラ
「○○さんが僕の愛人だとするでしょ?」「朝キスしてくるの?」
「いつ巨乳になって帰ってくる?」「エロ本買うの?」
女性職員が入っている着ぐるみに抱きつく
●マタハラ・パタハラ
女性職員に「子どもを作れ」「いつ子ども作るの?」
男性職員に「育休を1年取ったら殺すぞ」「絶対育休なんか取るなよ」
「育休を1年取った職員がいたが、出世はできないな」
●その他のハラスメント
(大きな手術を控えている職員に)「死んだ場合の保険金はいくら?」「香典はいくら?」
「保険金を町に寄付するつもりは?」
「太った?」「白髪が目立つ」「みすぼらしい」「いい年だよね」
さて、ここで「マタハラ(マタニティハラスメント)」と「パタハラ(パタニティハラスメント)」について整理しておきます。
マタハラとは、妊娠、出産等を理由とするハラスメントをいいます。
マタハラは、男女雇用機会均等法11条の3により、「職場において行われるその雇用する女性労働者に対する当該女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたこと、その他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものに関する言動により当該女性労働者の就業環境が害されること」と定義されています。
一方、パタハラですが、「父性」のことを「パタニティ」といいますので、父親が育児をすることに対するハラスメントを指します。
パタハラは、育児や介護に関する制度の利用等を理由とするハラスメント(=育児介護ハラスメント、以下「育介ハラ」 )に含まれます。
育介ハラは、育児介護休業法25条により、「職場において行われるその雇用する労働者に対する育児休業、介護休業、その他の子の養育又は家族の介護に関する厚生労働省令で定める制度又は措置の利用に関する言動により当該労働者の就業環境が害されること」と定義されています。
事業主には、セクハラ、パワハラ、マタハラ、育介ハラについて、大きく以下3つの防止措置が義務付けれています。
①事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発(研修の実施等)
②相談体制の整備(相談窓口の整備等)
③ハラスメントが発生した場合の迅速かつ適切な対応(事実確認、事後対応等)
また、マタハラと育介ハラには、上記に加えて次の措置を講じることが求められています。
④業務体制の整備(周囲への業務の偏りを軽減するための業務分担の見直し、業務の点検及び効率化など)
これは、育児や介護で仕事を抜けることで周囲の仕事の負担が増えると、ハラスメントが発生しやすい環境ができてしまうため、マタハラ・育介ハラを防止するための措置として義務づけられているもので、セクハラとパワハラの防止措置にはありません。