トランスジェンダー “女性用トイレの使用制限”違法
裁判のきっかけと争点は
経済産業省に勤めるトランスジェンダーの職員が、職場の女性用トイレの使用を制限されているのは不当だとして国を訴えた裁判で、最高裁判所は、トイレの使用制限を認めた国の対応は違法だとする判決を言い渡しました。性的マイノリティーの人たちの職場環境に関する訴訟で最高裁が判断を示したのは初めてです。
生物学的な性別が男性であり性同一性障害である旨の診断を受けている国家公務員が行った「職場の女性トイレ使用に係る国家公務員法第86条の規定による行政措置の要求」を認められないとした人事院の判定が違法とされました。
国家公務員法第86条は、「職員は、俸給、給料その他あらゆる勤務条件に関し、人事院に対して、人事院若しくは内閣総理大臣又はその職員の所轄庁の長により、適当な行政上の措置が行われることを要求することができる」旨を規定しています。
二審の東京高等裁判所は「経産省には他の職員が持つ性的な不安も考慮する必要があった」として、使用制限を適法としていましたが、最高裁判所は「経産省が同僚らを対象に開いた説明会で、明確に異論を唱えた者はおらず、現に2階以上離れた階の女性トイレを使用していてトラブルになったことはない」と指摘し、使用を制限する理由はなく、裁量権の逸脱・濫用に当たるとしました。
経団連の十倉会長は11日の記者会見で、最高裁判決について「できるだけ多くの人が多様性を持って職場で快適に働けるようにするというのは基本原則だ」との考えを示し、「6月に施行された性的少数者への理解増進法を考慮し、判決の意義について会員企業で共通の見解を持つ必要がある」とコメントしています。