住商、最初の配属先を事前選択可能
2025年入社から
住友商事は2月に募集を始める2025年4月入社の新卒採用から、最初の配属先を入社前に選択できる新制度を導入する。再生可能エネルギーの開発や不動産など足元で約50の事業があり、希望する事業を選んで応募する。入社後の配属先に不安を持つ学生が増えていることに対応する。
終身雇用を前提とする日本企業、特に「JTC」と呼ばれる伝統的な日本の大企業では、人事異動・配置転換の主導権を会社が強力に握っています。事業の拡充や再編等に合わせて、従業員を臨機応変に異動・配置することが、会社の成長と経営の安定には不可欠と考えられているためです。
新卒一括採用の新入社員は、初期配属される部署や担当職務などが未定のまま入社しなければならないだけでなく、その後も定年退職までの長い期間にわたり会社が指示する人事異動に従わなければなりません。会社が定年まで従業員を雇用する条件と引き換えに、従業員は異動や転勤をほぼ無条件に受け入れるというトレードオフの関係が成り立っているといえます。
しかし、今や新入社員の3割は、現在勤めている会社で定年まで働き続けるとは考えていないようです。一般社団法人日本能率協会「2023年度新入社員意識調査」によると、新入社員自身の仕事・働き方に対する考え方について「A.定年まで一つの会社に勤めたい」「B.機会があれば転職・独立したい」のいずれかを尋ねたところ、「B に近い」(「B に近い」+「どちらかというと B に近い」)と答えた割合が 30.1%となりました。
ところで、2024年、法改正により人事労務担当者の対応が必要になるものの1つに「労働条件明示ルールの変更」があります。会社は、労働契約の締結に際し、従業員に対して、賃金、労働時間その他一定の労働条件を明示しなければならず、明示しなければならない労働条件は労働基準法施行規則に定められています。
この労働基準法施行規則が改正され、2024年4月以降、労働契約の締結・更新の際、明示する労働条件が追加されることになりました。これにより、会社には、入社の時点で、従業員が将来、異動する可能性や転勤の範囲について明示する義務が課せられます。労働条件明示ルールの変更は、日本型雇用が見直され、会社が人事異動や転勤のあり方を再考する機会になると思います。