通勤定期代の変更…随時改定に注意
2019年10月より消費税が10%に増税され、通勤定期代も変更となります。通勤定期代が変更となると会社の給与計算担当者の仕事が増えます。各社員の通勤手当の金額を変更していく作業ありますが、他にも随時改定というものに4か月後対象になる社員が出るかチェックしなければなりません。では、随時改定が何なのかについて説明します。
健康保険や厚生年金の保険料や保険給付額は、標準報酬月額という毎月の給与等の報酬額をいくつかに区分された等級に当てはめた仮の報酬に基づいて算出されます。例えば、月額の報酬が23万5000円だとすると、健康保険と厚生年金の標準報酬月額は24万円となります。ちなみに、標準報酬月額は上限があり、健康保険は139万円、厚生年金は62万円が最大となります。
では、随時改定とは何なのか
通常、上記の標準報酬月額は、毎年1回7月に標準報酬月額を決定し、9月から翌年の8月まで額が使われますが、昇給などによって報酬の額に著しい変動があった場合に、標準報酬月額を改定することが随時改定となります。その随時改定を行うために提出する届出が「月額変更届」になります。ちなみに、この「月額変更届」から随時改定のことを「月変」とも呼ばれます。
正社員随時改定になる要件は以下3つすべて該当したときです。
- 固定的賃金が変動又は賃金体系が変更
- 変動月以降の継続した3ヶ月の支払基礎日数が全て17日以上
- 変動月以降の継続した3ヶ月の報酬の平均額に基づく標準報酬月額と、現在の標準報酬月額との間に2等級以上の差が生じたとき
1. の固定的賃金の変動は重要な要件で、3ヶ月間の非固定的賃金の残業代だけいくら増えても対象になりませんが、固定的賃金である通勤手当や住宅手当がわずかでも変動し、毎月17日以上出勤した上で残業代が増えて2等級以上報酬が変動すると対象になります。冒頭で記した通勤手当の変動は、随時改定になる一つの要件なのです。
これ以外に、随時改定には、「上がり・上がり・下がり・下がりの原則」があります。
固定的賃金が下がったにも関わらず、非固定的賃金が上がって2等級以上の差が生じた場合、またその逆も随時改定は行われません。例えば、基本給が下がって、残業代が著しく増えてトータルの賃金が上記要件に該当しても随時改定は行われません。
また、3ヶ月平均額と年平均額の間に2等級以上の差が生じるときは、申立書と本人の同意書を添付して届出すれば随時改定の対象から除外できます。例えば、特定の3ヶ月間だけ非常に忙しくて残業代がたくさん支給された場合です。
新しい標準報酬月額への改定時期と適用期間は以下の通りです。
<改定時期>
固定的賃金が変動した月から起算して4か月目に新しい標準報酬月額に改定
(新しい標準報酬月額に基づく保険料控除は、原則の翌月控除の場合、新しい標準報酬月額に変更された月の翌月から控除となります。)
<適用期間>
改定が1~6月の場合 その年の8月まで
改定が7~12月の場合 翌年の8月まで
最後に。通勤定期代が改定された10、11、12月の給与で著しい変動はないか。12月は要チェックですね。