小売り・外食で2人に1人がカスハラ被害
冬の屋外で2時間謝罪、動画撮られネット中傷
顧客による理不尽なクレーム「カスタマーハラスメント(カスハラ)」が、社会問題化している。小売りや外食などの労働組合が加盟するUAゼンセンが組合員に行った調査結果によると、直近2年以内で被害に遭ったという回答は半数の46・8%に上った。企業は従業員を守る対策作りを急いでいる。
パーソル総合研究所さんが、過去3年以内にカスタマーハラスメント(以下、カスハラ)を受けた被害経験者3,000人を対象とした「カスハラに関する定量調査」の結果を発表されています。
それによると、カスハラ被害への会社側の対応は、「嫌がらせの被害を認知していたが、何も対応はなかった」(36.3%)が最も多く、「会社から対応があった」は26.0%でした。
会社から対応があった場合は、その内容(複数回答)として「事実確認のためのヒアリング」(44.5%)が最も多く、次いで、「被害者の要望を聴いたり、問題を解決するために相談にのってくれた」(44.2%)、「社内の上司・同寮・部下に事実確認を行った」(39.9%)となっています。
また、カスハラ被害を相談した人の25.5%が社内でのセカンド・ハラスメントを経験したと回答しています。セカンド・ハラスメントとは、カスハラ被害者が被害の相談や報告等をおこなったときに起こるハラスメントのことで、その内容(複数回答)は、「ひたすら我慢することを強要された」(11.0%)、「軽んじられ、相手にしてもらえなかった」(8.9%)、「一方的に自分自身に責任転嫁された」(8.2%)、「自分よりも加害者側を一方的に擁護された」(5.8%)と続いています。
さて、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメントにおいて事業主に義務づけられている防止措置ですが、現時点では、カスハラについて防止措置義務は課されていません。しかし、パワーハラスメント指針のなかで、カスハラについても相談先を定め、適切に対応できるような体制を整備することが望ましいとされています。
2022年2月には、厚生労働省が「カスハラ対策企業マニュアル」を策定・発表し、事業主による取り組みを促しています。また、2023年6月には旅館業法が改正されカスハラを繰り返す顧客の宿泊を拒むことができるようになり、2023年9月には心理的負荷による精神障害の労災認定基準にカスハラが具体的な出来事として追加されました。
こうした動きの背景にあるのは、「従業員を守る」意識です。企業は、従業員の健康と安全を守る義務「安全配慮義務」を負っていますので、従業員の心身の健康を害するカスハラを放置すると、従業員から損害賠償を請求される可能性があります。顧客からの悪質なクレームには、企業として毅然と対応することが求められる時代になっているといえます。