ディズニー過重労働訴訟 千葉地裁
時効理由に元ダンサー男性の請求棄却
千葉県浦安市の東京ディズニーランドでダンサーとして働いていた男性が、ひざを痛めて就労できなくなったのは安全配慮義務違反が原因だとして運営会社に損害賠償を求めた裁判で、千葉地裁は3月19日、訴えを退けました。
本件に関連して、安全配慮義務違反による損害賠償請求の時効について触れておきたいと思います。
時効は「民法」で定められていますが、民法は1896年(明治29年)の制定後、債権関係の規定(契約等)については、約120年間ほとんど改正がありませんでした。そのため、社会・経済の変化への対応を図るという観点等から、2020年4月1日に「民法の一部を改正する法律」が施行され、
時効についても見直しが行われています。
時効の期間において、「権利を行使できる時(客観的起算点)から」という従来の起算日の考え方に加え、「権利を行使できることを知った時(主観的起算点)から」という起算日の考え方が追加されました。これにより、安全配慮義務違反等債務不履行を主張する場合、改正民法第166条により次の①、②のいずれか早い方が時効となります。
①権利を行使できることを知ってから5年
②権利を行使できる時から10年
ただし、これには特則(改正民法第167条)が設けられており、人の生命・身体の侵害による損害賠償請求の場合、②は、権利を行使できる時から
20年に延長されます。
なお、改正には経過措置がありますので、安全配慮義務違反の債務不履行については、労働契約の締結が2020年4月1日より前の場合、改正前の
10年の時効が適用されます。これは、債務である安全配慮義務は、労働契約の締結当初から存在していたと考えることによるものです。