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年次有給休暇を全部または一部前倒しで付与する場合の取扱い


年次有給休暇は入社6ヵ月後に8割以上の日数を出勤した従業員に付与する、というのが労働基準法で定められた最低限のルールです。ただ、心身のリフレッシュを目的にした年次有給休暇ですから、新入社員や中途入社者にも、入社時(法定の基準より前)に、年次有給休暇の全部または一部を付与されている会社もあります。

今回のブログでは、4月1日入社の従業員に年次有給休暇を全部または一部前倒しで付与する場合の年5日の取得義務の取扱いについて解説いたします。
年次有給休暇の前倒し付与をご検討されている事業主様のご参考にしていただければ幸いです。

〇ケース1 入社(2022年4月1日)と同時に10日の年次有給休暇を付与する場合

ポイント 法定の付与日数が10日以上の方に対して、法定の基準日より前倒しで付与する場合であっても、付与日数が10日に達した時点で年5日の取得義務が発生します。

ケース1の場合、入社日(2022年4月1日)に前倒しで10日の年次有給休暇を付与していますので、入社日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。

〇ケース2 入社(2022年4月1日)から半年後の2022年10月1日に10日の年次有給休暇を付与し、翌年度以降は全社一斉付与日である2023年4月1日に年次有給休暇を11日(2年目の基準日に基づく付与日数)付与する場合  

ポイント 年5日の取得義務にかかる期間に重複が生じた場合には、重複が生じるそれぞれの期間を通じた期間(前の期間の始期から後の期間の終期までの期間)の長さに応じた日数(比例按分した日数)を当該期間に取得させることも認められています。

ケース2の場合、最初に10日の年次有給休暇を付与した2022年10月1日と全社一斉付与日である2023年4月1日を基準としてそれぞれ1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要がありますが、管理を簡便にするため2022年10月1日(1年目の基準日)から2024年3月31日(2年目の基準日から1年後)までの期間(18か月)に、7.5日(18÷12×5日)以上の年次有給休暇を取得させることも可能です。
※労働者が半日単位の取得を希望し、使用者がこれに応じた場合は「7.5日以上」になり、それ以外は「8日以上」となります。

〇ケース3 入社(2022年4月1日)と同時に5日の年次有給休暇を付与し、2022年7月1日に更に5日の年次有給休暇を付与する場合で、途中労働者が自ら5月1日、5月2日に請求し、合計2日年次有給休暇を取得した場合

ポイント 一部前倒しで付与された年次有給休暇を基準日以前(2022年4月1日~2022年6月30日)に労働者が自ら請求・取得していた場合(計画年休も含む)には、その日数分を5日から控除する必要があります。

ケース3の場合、付与された年次有給休暇が10日に達した2022年7月1日を基準日として、その日から1年以内に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。ただし、入社時に一部前倒しで付与された年次有給休暇を2日取得していますので、2022年7月1日からの1年間に残り3日年次有給休暇を取得させなければならないということになります。

(補足)ケース3の場合、1年目の基準日は2022年7月1日ですが、2年目の基準日はいつになるでしょうか。

 → 2年目の基準日は、最初に5日付与された入社日から1年後の2023年4月1日となります。したがって、2年目の基準日から1年以内(2023年4月1日~2024年3月31日)に5日の年次有給休暇を取得させる必要があります。一方、この期間には、1年目の基準日からの年5日の取得義務期間(2022年7月1日~2023年6月30日)に3か月の重複期間がありますので、ケース2と同様に、管理を簡便にするため、2022年7月1日から2024年3月31日までの期間(21か月)までの間に9日以上(21÷12×5=8.75)の年次有給休暇を取得させることも認められます。
ただし、ケース3の場合では、入社時に一部前倒しで付与された年次有給休暇を2日取得していますので、9日から2日を控除し、2022年7月1日から2024年3月31日までの期間(21か月)までの間に7日以上の年次有給休暇を取得させなければならないということになります。

引用元:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署「年5日の年次有給休暇の確実な取得 わかりやすい解説-2019年4月施行-」

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