人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて
人材不足解消のカギは仕事と子育ての両立支援!
厚生労働省は12月13日、「仕事と育児の両立支援」に関する意識改革に役立つ資料を公表しました。その背景には、「こども未来戦略方針」で、男女がともに働き、子育てをする「共働き・共育て」の推進が掲げられており、特に男性の育児休業について、政府目標を令和7年までに取得率50%へ引き上げるとともに、令和12年までに85%を目指す方針が盛り込まれていることがあります。
本ブログで概要をご紹介しますので、ぜひ自社の「育児休業を取得しやすい職場環境づくり」に向けた周知啓発を進める際にご活用ください。
人口減少について
資料では、15~64歳人口の著しい減少が、超高齢化社会を招き、経済等に深刻な影響を及ぼすなど、国の存続に関わる深刻な問題になるとされています。
下記グラフを見ると、2030年代に入ってから若年人口は現在の倍のスピードで急減することが見込まれます。このまま2070年になると、総人口8,700万人で15~64歳人口は52.1%、65歳以上は、38.7%で5人に2人近くが高齢者になるとされています。この頃の日本はどうなっているのでしょうか。年金制度はどうなっているのでしょうか。かなり心配になります。
企業の取組みへの期待について
資料では、このような危機的な状況になることを回避するため、2030年代に入るまでが、少子化傾向を反転できるかのラストチャンスとして、出生率改善のため、企業のトップダウンによる決断と実行が必要としています。出生率に大きな影響を与えている要因として、20代、30代の①結婚、②就労、③出産、④子育て環境が挙げられ、①~④の環境を改善する取り組みが企業に必要になるとされています。
<出生率に大きな影響を与えている企業の要因と改善する取り組み>
①結婚
結婚行動を促すため、若年世代の「所得水準、雇用形態」を改善する。
②就労
男女ともに就労と育児を「両立」できる「働き方」ができる職場環境(育休制度の利用促進、長時間労働の抑制)へ改善する。
③出産
女性が出産をためらわないように、出産退職、出産・育児による収入低下・喪失を防止する。
④子育て環境
テレワークなどの働き方で、長時間で苛酷な通勤環境をなくしていく。
学生・転職希望者の就業に関する意識、出産・育児を理由に離職した女性のニーズ
企業にとって、人手不足は死活問題であり、労働生産性の向上等を図るとともに、人手確保に向けて、新入社員となる学生や転職希望者の就業ニーズに応えつつ、他方で、結婚・出産を契機とした女性の離職防止等を図っていくことが重要となります。
学生の就業に関する意識調査として、夫婦共働き等に関する意識、企業選択で意識することについてアンケートされ、「夫婦共働きが望ましいと考える」と「育児休業をとって子育てしたい」と考える男子学生は年々増えており、来年卒業予定の学生ではどちらも6割を超えています。また、就職活動で企業を選択する際に意識したり、調べたりしたことについては、「残業や休日出勤の実態」「多様な働き方の制度(在宅勤務、フレックスタイム制など)」が男女ともに最も高くなっており、働きやすさが重視されていることが分かります。この傾向は、転職希望者への転職先を決定した理由のアンケートにおいても同様で、就職先や転職先として選ばれる企業になるためには、職場環境の改善等に取り組む必要があります。
他方、出産・育児を理由に離職した女性への末子の妊娠判明当時の仕事を辞めた理由についてのアンケートでは、「仕事を続けたかったが、仕事と育児の両立が難しかったため」が高く、短時間勤務制度などの整備がなかったなどの背景があったためとする回答が多くなっています。
正社員の女性は、子が生まれてまもなくは休業、1歳以降は短時間勤務を希望する割合が高く、3歳以降は、残業をしない働き方や、柔軟な働き方(出社・退社時間やシフトの調整、テレワーク)を希望する割合が高くなっており、出産・育児を理由に離職することを防止するためには、子供の年齢に沿った働き方を許容することが重要になると考えられます。
男性の育児休業取得の促進について
2021 年に育児・介護休業法が改正され、育児休業を取得しやすい環境整備や 2022年10月からの産後パパ育休の創設などによって、企業や労働者の認知が進んできた男性の育児休業取得ですが、
男性の育児休業取得率は、2022年(※1)に17.13%と上昇中。さらに・・・
従業員1,000人超の企業に対する直近のアンケート(※2)では、46.2%と大企業ではかなり取組が進んでいるとのことです。
(※1)厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」。2020年10月1日~2021年9月30日に出生した子に関して、2022年10月1日までに育児休業を開始した者または開始を申し出た者の割合。
(※2)厚生労働省イクメンプロジェクト(速報)「令和5年度男性の育児休業等取得率の公表状況調査」 。調査時点を2023年6月1日として、前事業年度の状況をアンケート。
2017年は、男性の育児休業取得率は5.14%だったので、かなり普及してきたという印象です。今後は、男性の育児休業取得をきっかけに、働きやすい職場環境に取り組む企業がさらに増えていって欲しいと思います。
参考資料:厚生労働省リーフレット「人口減少社会への対応と人手不足の下での企業の人材確保に向けて~人材不足解消のカギは仕事と子育ての両立支援!~」