北九州市から福島市への配置転換命令は無効
数学教師の男性勝訴…学校側は控訴を検討
明治学園中学高等学校(北九州市戸畑区)で数学教師として勤務していた男性が同校の経営法人を相手取り、福島市の系列校への配置転換命令の無効などを求めた訴訟の判決が19日、福岡地裁小倉支部であった。寺垣孝彦裁判長は「不当な動機、目的をもって行われたことが強く疑われる」などとして、配転命令の無効を認める判決を言い渡した。
「配置転換命令」について争われた代表的な裁判例に、東亜ペイント事件 (S61.07.14最二小判)があります。事案の概要及び判決の骨子は、厚生労働省のサイト「確かめよう 労働条件」をご覧ください。
さて、配転命令の有効性は、次のように二段階で判断されます。
①そもそも労働契約上、当該労働者に配転を命じることができる使用者の権利があるか
②(使用者の配転命令権が認められるとしても)以下に照らして、その配転命令は権利濫用ではないか
1)業務上の必要性の有無
2)不当な動機・目的の有無
3)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせているか否か
配転命令に1)~3)の特段の事情があると認められない限り,その配転命令は権利濫用には該当せず、無効とはなりません。東亜ペイント事件では、「労働者が通常甘受すべき不利益の程度」が判断の焦点になっており、その後の下級審裁判例でもこの点に着目した判断が行われています。
また、3)に関しては、労働者の仕事と生活との調和(労働契約法3条3項)及び育児介護を行う労働者に対する配慮(育児介護休業法26条)にも留意する必要があります。
【労働契約法3条3項】
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
【育児介護休業法26条】
事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
なお、ヒューマン・プライム通信の「人事・労務 実務の基礎知識」シリーズ第7回では、「募集・採用/配転・出向」の留意事項を解説していますので、この機会にぜひご視聴ください。