物価高超す賃上げ相次ぐ 春季労使交渉スタート
アサヒ・キユーピー6%上げ意向 前向きな中小目立つ
2024年の春季労使交渉が24日、事実上始まった。物価上昇を超える賃上げが焦点となるなか、23年を上回る高水準の意向を示す大企業が相次ぐ。アサヒビールやキユーピーは6%程度を掲げる。中小企業がどこまで追随できるかも注目される。
2024年春季労使交渉の開始に先立ち、1月22日に政労使の意見交換会議が開かれ、岸田首相が出席しました。首相は、「我が国経済は、30年余り続いたコストカット型経済から、所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行するチャンスを迎えている」とし、「物価動向を重視し、昨年を上回る水準の賃上げ」を求めました。
なかでも、中小企業・小規模企業における賃上げが不可欠とし、「労務費の価格転嫁を通じ、賃上げ原資の確保」のため、経済団体に対して、労務費転嫁のための価格交渉に関する行動指針の徹底と取り組み状況のフォローアップなどを要請しました。
首相の発言内容は次の通りです。
第2に、中小企業・小規模企業における賃上げです。
我が国全体で賃金を引き上げていくためには、全従業員数の7割が働く中小企業・小規模企業における賃金引上げが不可欠です。そのためには、労務費の価格転嫁を通じて、賃上げの原資を確保することが鍵になります。政府としては、賃上げ税制の拡充や、カタログから商品を選ぶように簡単に補助を受けられる省力化投資補助金などの賃上げ促進策を実行に移すとともに、
労務費の価格転嫁対策に全力で取り組みます。昨年末に決定した、労務費の転嫁のための価格交渉に関する指針に定めた12の行動指針に沿った行動の徹底を産業界に強く要請するとともに、独占禁止法等に基づく厳正な対処を行います。
適切な価格転嫁を、我が国の新たな商習慣として、中小企業間を含めて、サプライチェーン全体で定着させます。このため、合計1,873の業界団体に対し、指針の徹底と取組状況のフォローアップを要請しました。さらに、コストに占める労務費の割合が高い、あるいは、労務費の転嫁率が低いといった、特に対応が必要な22業種については、各団体に対し、自主行動計画の策定や、転嫁状況の調査・改善を要請いたします。フォローアップのため、村井官房副長官をヘッドとして関係省庁連絡会議を設置いたします。実行あるのみです。
中小企業における賃金引上げには、労働生産性の向上と適正な価格転嫁により、賃上げの原資を確保・増大していくことが不可欠です。労働生産性の向上には、DXを含む設備投資を行うとともに、従業員のエンゲージメント向上にも資する働き方改革のさらなる推進や、イノベーション創出が有効となります。また、価格転嫁については、社会全体で受容していくことが求められます。
ただ、中小企業の多くは労働組合や労使協議機関がなく、そこの従業員が、賃金をはじめとする労働条件に対する要望を企業に伝え、交渉・協議する仕組みが整っていません。
そこで、中小企業では、経営トップと従業員との距離が近いといった利点を活かし、対話を通じて、企業も従業員も納得する適切な賃上げを実施していくことが望まれます。