「福岡→福島」遠方の系列校への転勤命令。判断は?
1審に続いて控訴審も“命令は無効”の判断
自身が採用された後に合併した学校法人が運営する、遠方の系列校への転勤を命じられた男性が、命令の無効を求めている裁判の控訴審で、21日、福岡高裁は「労働契約上の義務がない」として、転勤命令を無効とした1審判決を支持し控訴を棄却しました。
北九州市の私立明治学園で勤務していた男性教員が「福島市にある系列校に配置転換を命じられたのは不当」だとして、地位確認を求めた訴訟の控訴審判決で、福岡高裁は、「配転命令は無効」と判断した一審(福岡地裁小倉支部)判決を支持し、明治学園側の控訴を棄却しました。福岡高裁は判決理由で、当時の学校運営法人が「不当な動機に基づき命令したと推認される。権利を乱用したもので、無効というべきだ」と指摘しました。
配転命令の有効性は、次のように二段階で判断されます。
①そもそも労働契約上、当該労働者に配転を命じることができる使用者の権利があるか
②(使用者の配転命令権が認められるとしても)以下に照らして、その配転命令は権利濫用ではないか
1)業務上の必要性の有無
2)不当な動機・目的の有無
3)労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせているか否か
配転命令に1)~3)の特段の事情があると認められない限り,その配転命令は権利濫用には該当せず、無効とはなりません。
また、3)に関しては、労働者の仕事と生活との調和(労働契約法3条3項)及び育児介護を行う労働者に対する配慮(育児介護休業法26条)にも留意する必要があります。
【労働契約法3条3項】
労働契約は、労働者及び使用者が仕事と生活の調和にも配慮しつつ締結し、又は変更すべきものとする。
【育児介護休業法26条】
事業主は、その雇用する労働者の配置の変更で就業の場所の変更を伴うものをしようとする場合において、その就業の場所の変更により就業しつつその子の養育又は家族の介護を行うことが困難となることとなる労働者がいるときは、当該労働者の子の養育又は家族の介護の状況に配慮しなければならない。
なお、ヒューマン・プライム通信の「人事・労務 実務の基礎知識」シリーズ第7回では、配置転換や出向における留意事項を解説していますので、この機会にぜひご視聴ください。