最高裁「みなし労働」審理差し戻し 適用可否、客観記録を重視
日報の正確性「検討不十分」
外国人技能実習生の指導員だった女性の職場外の業務について、「みなし労働時間制」を適用できるかが争われた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(今崎幸彦裁判長)は16日、適用を認めず団体側に未払い賃金の支払いを命じた二審・福岡高裁判決を破棄し、審理を同高裁に差し戻した。裁判官5人全員一致の結論。
4月は、今後の人事労働実務に大きな影響を与える可能性のある最高裁判決が2つ出されることになっています。
1つ目が、昨日(4月16日)の「事業場外みなし労働時間制」の適用に関する判断です。判決文は、こちらからご覧になれます。
2つ目は、4月26日に示される「配置転換」に関する判断です。「事業場外みなし労働時間制」については、阪急トラベルサポート事件(最判平26.1.24)以来の、また、「配置転換」については、東亜ペイント事件(最判昭61.07.14)以来の最高裁の判断となります。
さて、労働基準法第38条の2による「事業場外労働のみなし労働時間制」とは、労働者が業務の全部又は一部を事業場外で従事し、使用者の指揮監督が及ばないために、当該業務に係る労働時間の算定が困難な場合に、使用者のその労働時間に係る算定義務を免除し、その事業場外労働については特定の時間を労働したとみなすことのできる制度です。
なお、次のように事業場外で業務に従事する場合であっても、使用者の指揮監督が及んでいる場合については、労働時間の算定が可能であるので、みなし労働時間制の適用はできません。
①何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
②無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
③事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合
阪急トラベルサポート事件は、旅行会社の主催する募集型企画旅行の添乗業務について、事業場外労働のみなし労働時間制が適用できるかが争われた事件です。判断要旨は次の通りです。
添乗業務は、旅行日程がその日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定にかかる選択の幅は限られているとし、また、派遣先である旅行会社は、派遣添乗員との間で、あらかじめ定められた旅行日程に沿った旅程管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ、旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされているということから、業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、旅行会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえない。