裁量労働制の導入・継続の新たな手続きについて
裁量労働制には、専門業務型と企画業務型があります。2024 年4月1日以降、専門業務型の適用のためには対象労働者の同意が必要となり、専門業務型・企画業務型ともに、同意の撤回を認めなければなりません。2024 年4月1日以降も、継続的に裁量労働制を適用する場合、2024 年 3 月末までに法改正の取り扱いに適合した労使協定届・労使委員会決議届を所轄の労働基準監督署に届出る必要があります。
それでは、法改正の具体的な内容についてご説明します。
専門業務型裁量労働制については、労働者本人の同意を得ること、同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと、同意の撤回の手続き、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定に定めることが新たに必要になり、労働者本人の同意は、労働者ごとに、かつ労使協定の有効期間ごとに得ることが必要になります。労働者本人の同意を得る手続きにつきましては、本ブログの参考資料にある「専門業務型裁量労働制の解説」をご参照ください。
一方、企画業務型裁量労働制については、もともと同意を得ることが必要でしたが、新たに同意の撤回の手続き、同意の撤回に関する記録を保存すること、対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合に、労使委員会に変更内容の説明を行うことが決議に必要になります。
さらに、企画業務型裁量労働制については、労使委員会の運営規程に次の事項を追加で定めることが必要になります。
- 対象従業員に適用される賃金・評価制度の内容についての使用者から労使委員会に対して行う説明に関する事項
- 制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項
- 労使委員会の開催頻度を6ヵ月以内ごとに1回とすること
なお、労働基準監督署に対する定期報告の頻度は、従来は6ヵ月以内ごとに1回でしたが、有効期間の始期から起算して初回は6ヵ月以内に1回、その後1年以内ごとに1回になります。
【労使協定・決議に定める事項】※下線が今回の法改正による追加事項
厚生労働省リーフレット「事業主の皆様へ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」より引用
※ご参考までに、厚生労働省が公表した専門業務型裁量労働制に関する協定届の新様式の記載例は以下のようになります。
新様式では、上記内容の通り、労働者本人の同意を得ること、同意をしなかった場合に不利益な取扱いをしないこと、同意の撤回の手続き、同意とその撤回に関する記録を保存することの事項が追加されています。
この他にも、法改正後は、「労働基準法第38条の4第1項の規定により同項第1号の業務に従事する労働者の適正な労働条件の確保を図るための指針」に基づき、健康・福祉を確保するための措置を講じるにあたっては、①事業場における対象従業員全員を対象とする制度的な措置、および、②個々の対象従業員の状況に応じて講じる措置の分類から、それぞれ1つずつ以上の措置を実施することが望ましいとされました。
【①事業場の対象従業員全員を対象とする措置】※赤字が今回の法改正による追加事項
・勤務間インターバルの確保
・深夜労働の回数制限
・労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)
・年次有給休暇についてまとまった日数連続取得の促進
※このうち、特に把握した対象労働者の勤務状況及びその健康状態を踏まえ、労働時間の上限措置(一定の労働時間を超えた場合の制度の適用解除)を実施することが望ましいとされています。
【②個々の対象労働者の状況に応じて講じる措置】※赤字が今回の法改正による追加事項
・一定の労働時間を超える対象労働者への医師の面接指導
・代償休日または特別休暇の付与
・健康診断の実施
・心とからだの健康問題についての相談窓口の設置
・適切な部署への配置転換
・産業医による助言・指導、又は対象労働者に産業医等による保健指導を受けさせること
なお、裁量労働制についての概要や上記内容についてもっと詳しい内容や導入手順をお知りになりたい方は、厚生労働省のホームページ「裁量労働制の概要」より資料・リーフレット等をご覧ください。
また、同ホームページ上に、裁量労働制の概要や導入手順について分かりやすく解説した動画も公表されていますので、合わせてご覧ください。
参考資料
厚生労働省「事業主の皆様へ 裁量労働制の導入・継続には新たな手続きが必要です」
厚生労働省「専門業務型裁量労働制の解説」
厚生労働省「企画業務型裁量労働制の解説」
厚生労働省「様式第13号」