カスハラ、労災認定基準に
厚労省の検討会が提言
鬱病など精神障害の労災認定基準に関する厚生労働省の専門家検討会が20日開かれた。顧客による威圧的な言動や迷惑行為「カスタマーハラスメント(カスハラ)」の被害を判断基準に加えるよう提言。新型コロナウイルス禍の経験を踏まえ「感染症など病気や事故の危険性が高い業務」に従事したことも基準の一つとするよう求めた。厚労省は提言を踏まえ、今秋にも通達を出して運用を改める方針。
厚生労働省は昨年2月に「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しました。マニュアルでは、カスタマーハラスメントの定義を以下の通り定めています。顧客等からのクレーム・言動のうち、
①要求内容が著しく妥当性を欠く場合であって、
②要求実現のための手段・態様の悪質性が高く、
③労働者が就業する上で看過できない程度の支障が生じていること
自社の従業員が顧客等からカスタマーハラスメント被害を受けた場合、十分な対応を行っていないと、事業主は安全配慮義務違反として損害賠償責任を負う恐れがあります。
カスタマーハラスメント裁判例(東京地裁平成30.11.2判決)は、買い物客とトラブルになった小売店の従業員が、会社の対策が十分ではないとして損害賠償を求めた事案ですが、裁判所は、カスタマーハラスメントに対して入社時にテキストを配布して初期対応を教育していること、サポートデスクや近隣店舗のマネージャーに連絡をして顧客の初期対応をマネージャーに対応させるようにしていたこと、深夜も店舗を2名体制にして接客トラブルが生じた場合の相談体制が整えられていたことから、安全配慮義務違反を否定しました。
このように、企業がカスタマーハラスメントに対する十分な対応策を整えておくことが必要です。企業が具体的に取り組むべき対策は、以下の通りです。
●カスタマーハラスメントを想定した事前の準備
①事業主の基本方針・基本姿勢の明確化、従業員への周知・啓発
②従業員(被害者)のための相談対応体制の整備
③対応方法、手順の策定
④社内対応ルールの従業員等への教育・研修
●カスタマーハラスメントが実際に起こった際の対応
⑤事実関係の正確な確認と事案への対応
⑥従業員への配慮の措置
⑦再発防止のための取組
カスタマーハラスメント対策のポイントは、ヒューマン・プライム通信のバックナンバーをご覧ください。