定年再雇用、基本給格差「支給目的で検討」 最高裁初判断
差し戻し審の判断は企業等の労務に影響を与える可能性
定年退職後の再雇用の際に基本給を減額したことの妥当性が争われた訴訟で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は20日、基本給の性質や目的を踏まえて引き下げの合理性を評価すべきだとする判断を示した。その上で、定年時の6割を下回る基本給は不合理と判断した一、二審判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。
最高裁判所の「破棄差し戻し」とは、高等裁判所の判決を否定し、過去に審理した裁判所で裁判をやり直しさせることをいいます。判決文によると、破棄差し戻し理由のポイントは以下の通りです。
正職員と嘱託職員である被上告人らとの間で基本給の金額が異なるという労働条件の相違について、各基本給の性質やこれを支給することとされた目的を十分に踏まえることなく、また、労使交渉に関する事情を適切に考慮しないまま、その一部が労働契約法20条にいう不合理と認められるものに当たるとした原審の判断には、同条の解釈適用を誤った違法がある。
最高裁は、昨日の判決で、正職員の基本給には、勤続給、功績給、職務給、職能給といった様々な性質があり、このような基本給を支給することとされた目的を確定することができない、と指摘しました。
一方、嘱託職員の基本給には、正社員の基本給とは異なる性質や支給の目的があった、と判断しています。
その上で、二審の高裁判決は「正職員の基本給につき、一部の者の勤続年数に応じた金額の推移から年功的性格を有するものであったとするにとどまり、他の性質の有無及び内容並びに支給の目的を検討せず、また、嘱託職員の基本給についても、その性質及び支給の目的を何ら検討していない」として、差額の支払いを認めた部分を破棄し、裁判を名古屋高裁でやり直すように命じました。