部下のパワハラ否定 静岡病院職員自殺訴訟判決
地裁、請求を棄却
2014年12月に静岡市立静岡病院の男性職員=当時(57)=が自殺したのは長時間労働や部下によるハラスメント行為への対応を怠ったことが原因として、遺族が市と地方独立行政法人静岡市立静岡病院を相手取り、約6200万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、静岡地裁は28日、請求を棄却した。原告の代理人弁護士は「控訴する方向で考えている」としている。
判決は、「自殺の危険を回避すべき安全配慮義務を負っていたとは認められない」とし、遺族側の請求を棄却しました。判決理由で、男性を監督する立場にあった職員がうつ病の発症や自殺する可能性を想定するのは困難だったと述べています。
さて、使用者は労働契約上、労働者に対して「安全配慮義務」を負うことが判例法において確立されたルールであり、労働契約法5条にも次の通り明文化されています。
「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
しかし、安全配慮義務の具体的内容は、個々の具体的状況によって異なるべきものであるとされており、その違反の成否についてもケースバイケースとならざるを得ません。
裁判所が安全配慮義務違反を判断する基準は、予見可能性と結果回避可能性です。予見可能性は、使用者が、労働者にその被害が発生する可能性を予見できたかどうかであり、結果回避可能性は、使用者が被害の発生を予見できたとして、その発生を回避することが可能だったかという判断です。
従って、使用者として、予見可能性と結果回避可能性のある業務災害を防止する措置が講じられていなければ、安全配慮義務違反が認められ、民事上の損害賠償責任を負う可能性があります。