「退職できない」相談増
22年度 人手不足を反映
仕事を辞めようとしても使用者に強硬に引き留められる「自己都合退職トラブル」が再び増加している。2022年度に全国の労働局に寄せられた相談は前年度比5.4%増の4万2694件で、4年ぶりに過去最高を更新した。新型コロナウイルスの影響が弱まり、企業の人手不足が進んだ影響とみられる。
従業員が退職の意思を会社に伝えようとしても、上司が面談に応じない、退職届を受理しない、有給休暇を取得させないといったことで、会社が退職を認めないという「自己都合退職トラブル」が増加しており、特に中小企業などにおける人材不足がその要因といわれています。
また、これに伴い「退職代行」というサービスも登場していますが、これは、従業員の代わりに退職の意思表示を会社に伝え、すぐに退職できるようにするというものです。
さて、労働契約の終了形態は、従業員からの意思によるもの、会社側からの意思によるもの、定年退職や期間満了等あらかじめ労働契約の期限が示されているものに大別されます。このうち、従業員からの意思によるものに「辞職」があり、辞職とは、従業員による一方的な意思表示によって労働契約を終了させることをいいます。原則として辞職することは自由ですが、期間の定めがない労働契約の場合には、2週間の予告期間が必要です(民法 627 条)。また、期間の定めがある労働契約の場合は、「やむを得ない事由」が必要(民法628 条)とされていますが、この規定は、労働者の退職を規制する目的ではないことから、心身の不調や家庭の事情など幅広い事由が認められています。
ここで、厚生労働省「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」より、自己都合退職に関する助言・指導の事例をご紹介します。
<事案の概要>
申出人の短時間労働者(学生アルバイト)は、事業主に退職の意思を伝えたものの、人手不足を理由に慰留された。そこで、労働局に相談の上、退職日を2週間後と定めた退職届を提出したが、事業主から「次のアルバイトが決まるまでは勤務して欲しい」と言われ、退職届の受け取りを拒否された。申出人は、トラブルなく円満に退職できるよう援助して欲しいとして、助言・指導を申し出たもの。
<助言・指導の結果>
●労働局から事業主に対し、民法第627条に基づき、期間の定めがない雇用契約は、原則として退職の申し入れから2週間を経過することによって終了する旨を説明し、申出人の希望する日を契約終了日とすることで紛争の解決を図るよう助言を行った。
●助言に基づき、事業主は、申出人が退職届に記載した退職日をもって雇用契約を終了することで申出人と合意した。
なお、ヒューマン・プライム通信の「人事・労務 実務の基礎知識」シリーズ第8回では、「労働契約終了のルール」をテーマに、紛争が生じやすい「解雇」、「雇止め」、「退職勧奨」を取り上げ、これらの場面における留意事項について解説しています。ぜひご視聴ください。