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「過重業務・パワハラ原因」 宝塚俳優死亡

遺族側 謝罪と補償を求める

宝塚歌劇団(兵庫県宝塚市)の俳優の女性(25)が9月に急死した問題で、遺族の代理人弁護士が10日、東京都内で記者会見し「過重な業務や上級生劇団員のパワハラによって心身の健康を損ない、自殺に至った」と訴えた。「将来ある女性が命を奪われたことは極めて重大だ」と強調。今後、歌劇団や運営する阪急電鉄と話し合った上で、謝罪と補償を求めるとしている。

日本経済新聞Web 2023年11月11日付け記事より引用しました。

 宝塚歌劇団は10月、外部の弁護士からなる調査チームを設置し、劇団員ら60人以上から聞き取りを行うなどして調査を進めていましたが、11月11日にホームページで、調査チームから報告書を受け取ったことを明らかにしました。調査結果については、今後の改革の方針とあわせて近日中に公表するとしています。

さて、使用者は労働契約上、労働者に対して「安全配慮義務」を負うことが判例法において確立されたルールであり、労働契約法にも明文化されていることはご存知のことと思います。

日本では高度経済成長期を経て、使用者は、危険な薬品を扱う作業や高所での建築作業など労働に伴う危険から労働者の生命や身体を保護すべきとの考え方が広まっていきました。そのような中、自動車整備作業中に死亡した自衛隊員の遺族が国に対し損害賠償などを請求した事件において、最高裁は、国は公務員の生命及び健康等から危険を保護するよう配慮すべき義務を負っているものと解すべきであり、このような安全配慮義務は、ある法律関係に基づいて特別な社会的接触の関係に入った当事者間において、当該法律関係の付随義務として当事者の一方又は双方が相手方に対して信義則上負う義務として一般的に認められべきものであるとし、国に対して損害の賠償を求めました(陸上自衛隊事件 最高裁三小 昭和50.2.25判決)。

その後も、自衛隊員の死亡事故等の公務員に関する安全配慮義務違反事件の最高裁判決が相次ぎ、昭和59年には、民間の労働者について安全配慮義務を認めるに至っています(川義事件 昭和59.4.10判決)。

このような司法判断を踏まえ、平成19年に施行された労働契約法5条において「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」と明記され、使用者に対し、法律上の義務として「安全配慮義務」を課しました。この規定は、上記の判例法理を明文化したものとされています。

ただし、安全配慮義務は、はじめから特定の義務が定めれられているものではありません。病気や怪我、死亡などの結果が生じたときに、使用者はその結果を回避するためにどのような義務(労働者の安全を守るための義務)を負っていたのかを特定し、使用者が当該義務を履行していたか否かを議論することで、その結果について使用者に法的責任があるか否かを検討するものです。

使用者は、その特定された義務を履行していなければ、安全配慮義務違反に問われ、損害賠償責任が生じることになります。従って、安全配慮義務の具体的内容は、個々の具体的状況によって異なるべきものであるとされ、その違反の成否についてもケースバイケースとならざるを得ません。安全配慮義務の特定にあたっては、法令、通達、指針、ガイドラインなどが具体的な義務内容としてしばしば参照されることとなります。

よって、使用者としては、法令、通達、指針、ガイドラインに沿って、労働者が安全に働けるようにする環境を整えることが重要であり、過重労働の防止や各種ハラスメント対策などを実施しなければなりません。

また、健康管理対策として、労働者の心身を守るための対策も必要です。特に、最近は労働者の健康管理や健康増進について積極的に支援する企業が増加しており、安全配慮義務の実践は避けることのできない社会的ニーズとなっています。

ヒューマン・プライム通信「人事・労務実務の基礎知識」シリーズの最新号では、「安全衛生」について解説していますので、ぜひご視聴ください。

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