雇調金特例を3カ月延長
政府、9月末までで最終調整 経済正常化と逆行
政府は新型コロナウイルス禍に伴う雇用調整助成金(雇調金)の特例措置を9月末まで延長する方向で最終調整に入った。6月末までの期限を3カ月延ばす。全業種が対象のままで助成水準も変更しない。一時的な支援のはずの特例は延長を繰り返している。足元の物価上昇も延長理由とするなど目的が変質しつつある。成長分野への労働移動を阻害するなど副作用の懸念も強まる。
雇調金特例の延長に関し、今回の特例措置の課題について『月刊社労士』2022年5月号掲載の「コロナ禍で雇用調整助成金等が果たしてきた役割と課題」(法政大学 酒井正教授)から、一部抜粋してご紹介いたします。
- 大いに活用されてきた特例措置であるが、それが長期にわたる中で、様々な懸念も挙げられるようになっている。長期間の休業による労働者の就業意欲の低下や、企業による不正受給の問題も看過できないが、最も大きな批判は、雇調金が経済のダイナミズムを失わせているというものだろう。
- これまでも、雇調金には、ゾンビ企業を延命することで産業構造の転換を遅らせ、本来、行われるべき労働移動を阻害しているとの批判が付きまとってきた。
- 企業も労働者も、ずるずると雇調金という「対処療法」に依存しがちなことも事実だ。リーマン・ショック時に比べても、今回の特例措置の規模は格段に大きく、雇調金がもたらしうる「副作用」もまた大きくなっていることが懸念される。