「勤まらない」「私物片付けて」と応酬、辞職か解雇か
「放言」が火種、真意争う 地位確認訴訟
「私物を片付けて」と勤務先の社長に言われ、解雇されたと思って出勤しなくなった男性。社長は逆に、男性が自分の意思で辞職したと考えていた。根拠は男性が去り際に残した「もう勤まらない」との捨てぜりふ。男性は辞めさせられたのか、自ら辞めたのか。感情まかせの言葉の応酬が、重大な認識の行き違いを生んだ。
このようなやり取りは、中小企業ではよくある事例ともいえますが、裁判所は事実認定には非常に慎重になります。本事案では、「もう勤まらない」という発言の有無自体が争われ、裁判所は「仮にそのような発言があったとしても、自暴自棄になって発言したものであり、辞職または退職の意思はない」と判断しました。
従業員との言い合いから退職・解雇を巡る労働問題へと発展するケースは決して少なくなく、会社としてトラブルを防ぐためには、辞職または合意退職申込みの意思表示について、口頭だけで済ませるのではなく、しっかりと従業員から書面で退職届を提出してもらい、受領しておくことが必要です。
なお、辞職、合意退職、解雇のそれぞれの違いについては、HP通信の動画「労働契約終了のルール」で詳しく解説していますので、この機会にぜひご視聴ください。