ジョブ型へ移行指針
官民で来春までに策定 岸田首相
職務給は個々の職種の専門性や業務の難易度を重視する。年齢や勤続年数、職務の遂行能力を評価する職能給と異なる。
首相は各企業が事情に合わせて職務給を導入しやすくすると説明した。「一律ではなく仕事の内容に応じたジョブ型の職務給を取り入れた雇用システムへ移行させる」と語った。
ニューヨーク証券取引所における岸田内閣総理大臣スピーチ(岸田文雄公式サイト_活動報告に掲載)より、ジョブ型移行指針に該当する部分を引用してご紹介します。
日本の五つの優先課題を紹介する。第1に、「人への投資」だ。デジタル化・グリーン化は経済を大きく変えた。これから、大きな付加価値を生み出す源泉となるのは、有形資産ではなく無形資産。中でも、人的資本だ。
だから、人的資本を重視する社会を作り上げていく。
まずは労働市場の改革。日本の経済界とも協力し、メンバーシップに基づく年功的な職能給の仕組みを、個々の企業の実情に応じて、ジョブ型の職務給中心の日本に合ったシステムに見直す。これにより労働移動を円滑化し、高い賃金を払えば、高いスキルの人材が集まり、その結果、労働生産性が上がり、更に高い賃金を払うことができるというサイクルを生み出していく。
そのために、労働移動を促しながら、就業者のデジタル分野などでのリスキリング支援を大幅に強化する。
~中略~
賃金システムの見直し、人への投資、女性活躍。これら人的資本に係る開示ルールも整備することで、投資家の皆さんにも見える形で取組を進め、また、国際ルールの形成を主導していく。
ここで、「ジョブ型雇用」と「ジョブ型人事制度」とは別の物であることについて触れておきたいと思います。「ジョブ型雇用」とは企業の中で必要な職務内容に対して、その職務に適したスキルや経験を持った人を採用する雇用方法を言います。一方、「ジョブ型人事制度」とは、仕事基準で設計・運用される人事制度のことであり、日本企業の人事制度の中では、代表的なものとして職務等級制度と役割等級制度が挙げられます。
職務等級制度は、企業内の職務をその重要度・難易度等に応じて「職務等級」に分類・序列化し、職務等級ごとに賃金レンジを設定する制度です。役割等級制度は、組織の達成目標に照らし、従業員の仕事上の役割をその重要度に応じて、「役割等級」に分類・序列化して賃金を決定する制度です。
なお、「日本の労働経済事情~人事・労務担当者が知っておきたい基礎知識~」(経団連)によると、日本の賃金制度は、1970年代~1980年代における「職務給」から、1990年代~2000年代においては「成果主義賃金」へ、そして、現在では「仕事・役割・貢献度を基軸とする多様な賃金制度」へと、変遷してきているとまとめています。
以下、引用し、ご紹介します。
多くの企業では、プロセスや人材育成も評価項目として扱うとともに、職種や職掌ごとに異なる賃金体系を適用する複線型を導入している。加えて、仕事や役割・貢献度を基軸として賃金水準との整合性を高めるべく、職能給や職務給、役割給等の複数の賃金項目を自社の実態に適した形で組み合わせた多様な賃金制度へと見直しが進展している。
Youtube「ヒューマン・プライムCH」では、「日本の労働経済事情~人事・労務担当者が知っておきたい基礎知識~」(経団連)からポイントを取り上げ、3回シリーズで解説いたします。
現在、第1回をアップしていますので、ぜひご視聴ください。